きょうのナナバン

140字以上のあれやこれ。

ご趣味は?

趣味は何ですかという質問にどう答えるべきか考えていた。いつ訊かれるねん、という疑問はいったん挟まないことにして。男女の出会いは趣味の話から始まることもあるかもしれないし。

三省堂のデイリーコンサイス国語辞典(アプリ版)によると、趣味とは「楽しみとして愛好する物事」らしい。うん、そんな気はしていた。ちなみに愛好とは「愛し好むこと」だそうだ。これもそんな気はしていた。じゃあ愛するとは何だと辞書を引くと、「好むこと」という意味が二番目に出てきた。堂々巡りってこういうときに使うのだろうか、と思ったりした。

さて、趣味の話である。僕が楽しみとして愛好しているモノとコトを思い浮かべてみた。真っ先に浮かんだモノは「本」だった。もちろんそこから連鎖して、本を読む“コト”も出てきた。

ならば趣味を訊かれた際は「読書です」と答えるのが僕の場合の正解なのだろうと結論を出しかけて、ふと立ち止まった。

なんとなく、なんとなくなのだけど、僕が楽しみとして愛好しているのは「本を読むこと」であって、読書ではないような気がするのだった。またまた辞書を引いてみると、読書とは本を読むこと、とある。つまりどちらも同じことを指している言葉で、どっちでもよろしいやんという話なのだけど、両者のあいだには何か踏み越えることを躊躇わす一本の細い線のようなものが引いてあるように僕は感じている。目を凝らすと見えてくる、そういった線が。

どちらが高尚だとか、そういうことではない。もちろんない。自分が愛好しているコトの実態により近く、自分にとってしっくりくる表現が二文字の熟語ではなく六文字の文章だった、というだけの話である。

それで一つ思い出した、自分はどうもしっくりこなくて使わない表現があった。読了という言い方だ。短くて便利な言葉なのだけど、ここにも「読み終える」とのあいだにほっそい線が引いてあるように僕は感じる。

ところで、趣味を訊かれる状況が僕にやってくることはあるんだろうか。