きょうのナナバン

俺アーカイブズ

過ぎた夏(2)

彼の言う「短いスパン」とは、いったいどこの時計を、あるいはカレンダーを基準にしているのだろう。それは僕らの知らない宇宙の、隅のほうでひっそりと暮らす、森の惑星の住人たちがもつ時間に準拠するのだろうか。彼らの星はやたら日が沈まないか、やたら日が昇らないのかもしれない。時間とは、万物に共通のようでいて、万物がそれぞれに持っているものなのかもしれない。

今年の夏は、母の誕生日から始まった。その日たまたま用事があった僕は実家に帰っていて、せっかくだからと夕飯を作ることにした。

今まで付き合ってきた人たちにさんざん「味が薄い」と言われてきた僕は、それでも自分ひとりで食べる分には変わらず薄味でいたのだけれど、こうして母の誕生日に振る舞う以上は「おいしい」と言ってほしくて、つい塩加減が多めになった。しょっぱいということはなかったが、母譲りの薄味を血肉にしてきた人間が作る料理にしては、味が濃かった。

「お母さんの料理を食べてきたのに、お兄ちゃんの料理は味がする」と妹が言った。おそらく褒めてくれたのだと思う。そうだぞ妹よ、こうして各家庭の味というものが築かれてゆくのだ、と思ったが何だか口にするとややこしそうなので、僕はへへへと笑った。

ちなみに同じことを、父の誕生日でもやらかした。ただでさえ高血圧の父に。

そんな夏のはじまりだった。

過ぎた夏(1)

この夏はけっこう遊んだ。

それまでの数年間に亘って猛威を振るっていたものが沈静したから、とはひとつも思ってはいないのだけど、前提を見直したうえで日常生活を構築し直すタイミングなのだろうという気がして、遊んだ。(なんだかこの話題は“個人のスタンス”が無言のうちに強く求められている感じがして、あまりインターネット上で話題にしたくないのだけど)

あとは何よりも、僕自身の調子が良かったというのが大きい。心身ともに、軽やかな気分だった。久しぶりに夏を見かけた気分だった。痩せつつあったし。

しかし遊んだといっても、旅行やテーマパークやスポーツや、あるいは友人と何かをするといった種類のものではなく、極めて個人的なものだった。

具体的に言うと、いろいろな飲食店に“飲みに”行った。おじさんにとって最高のアクティビティとは飲酒なのである。たぶん。

この夏の話を文章にして残すことは、そういえば元気になれた分岐点となる年だったのだなと、きっと僕にとっては命綱みたいに強固に、灯台みたいに遠くから、ひとつの句点を打つような明瞭さで、自分が戻るべき場所を示してくれる気がしたのだった。

ところがいまは10月22日であり、もしこれが夏休みの宿題だとしたら、ずいぶん長いあいだ未提出の状態ということになる。先生はずっと待っているのだろうか、もうすっかり諦めているのだろうか。まあとにかく、幸いなことに僕はそういった宿題の提出を求められる年齢でも立場でもなくなった。

そんなわけで、過ぎた夏の話をこれからしばらく(なるべく短いスパンで)書いていこうと思う。

Long time no see!

ダイエットのシーズン1が終わった。

朝と夜のだいたい同じ時間(食事前という同じタイミングと言ったほうが正確かもしれない)に体重計に乗るようにしている。ここ数日でひとまず目標にしていた体重がコンスタントに表示されるようになった。

7月のブログに書いたと思うのだけど(興味があれば探してください)、幼なじみと久しぶりに飲みに行こうかという話になって、そのときに本気で痩せなくちゃと行動を変えたのだった。

「いただきます」や「ごちそうさま」ほど毎日しぜんと口にするフレーズではなかったものの、一人暮らしにおける「おはよう」と「おやすみ」よりは頻繁に言っていたような気はする。「ダイエットするぞ」って。しかもけっこう長い期間。

心身の不調があって一気に太ってしまった。しかしそれは自分を傷付けないための言い訳だったのかもしれない。いくつかある要因のひとつには違いないし、中心的役割をなしていたとは思うけれど。ダイエットするぞと言いながら、小手先の対処を甘受してきたのは、その心身の不調からずっと抜け出せずにいたからだったのだろう。仕方ないじゃないか、調子が良くないのだから、ダイエットは後だよ、と。そんなふうにどこかで考えていたような気がする。

あるいは、一気に太れたのだから(数ヶ月で30キロ近く増えた)、減らすことだって難しくないだろうと思っていたのかもしれない。実際、数ヶ月とはいかなかったが大きな苦労を感じることなく体重はスムーズに減った。

二年にわたって体重三桁の壁を越えて維持する、という太っちょの才能を見出すことができた。80キロ台まで減らせた今だから言えることかもしれないが、なかなか貴重な経験ではあった。そして三桁でも恋人はできるのだという発見もあった。1年で別れたけれど。

しかしもう今後の人生では相撲部屋に入門するかハリウッドからのオファーでウエイトアップを求められない限り、二桁でじゅうぶんかなと思っている。

身長や筋肉の付き方なんかを踏まえると、いちばん自分の心身にしっくりくる体重は75キロくらいじゃないかと考えている。現在がちょうど折り返し地点と言えそうだ。

あしたからダイエットのシーズン2がはじまる。