きょうのナナバン

140字以上のあれやこれ。

最近は昼にサラダを食べている、歩いてもいる

減量をしようと思って三年が経った。なんとダイエットに一途な人間であろう。

一途といえば、中学生で始まった片思いが高校を卒業するまで続いたことがあった。その頃の僕には一片の勇気もなく、また、蝋燭に灯った火を持ち続ける厄介さも知らなかったから、告白せずに時間だけを費やした。その結末にはそれなりのそれなりがあるのだけれど、面倒なので割愛する。

いつか始めなくちゃいけない、きょうから始めるぞ、痩せなくちゃいけない、きょうから始めるぞ。その繰り返しで三年が経っていた。年々、時計の針は速くなり、カレンダーは薄くなっていく気がする。

話は去年の冬から始まる。そのとき付き合っていた人が、ダイエットをするなら野菜スープにしてみれば? と言ってくれて、冬のあいだは野菜スープを作って昼に食べるようにした。体重は少し減った。年が明けるまえに彼女とは別れた。

徐々に暖かい日が増えて、野菜スープを常温保存するのが怪しくなってきた。家でいちばん大きな鍋に一週間分を作っていたから、一人暮らし用の小さな冷蔵庫で保存するのは無理があった。冬が遠のき、春が近づくにつれ、僕は野菜スープを作らなくなり、体重が少し増えた。別れた彼女から時折、恋愛に関する近況報告があった。いい人が見つかればいいなと思った。

ゴールデンウィークが終わってまもなく、幼なじみの一人から「久々にみんなで飲まないか」と誘いがあった。みんなといっても、僕を含めていまも地元あたりで暮らしている三人ぽっちだ。ずいぶん長いあいだ会っていない気がしてLINEの履歴を辿ったら、三年の歳月が過ぎていた。最後に会ったのは僕が太るまえだ。
彼らは現在の僕の姿を知らない。別に知ったからといって笑って済む話なのはわかっていたけれど、それでも太った自分を見られるのが怖いと思った。厭だった。痩せようと本気で思った。

飲み会の当日、僕は6キロ減量していた。幼なじみの一人は「知らん人がおると思った」と言い、もう一人は「ホームラン打てるんちゃう」と言った。僕からすれば痩せていたが、彼らからすれば太っていた。けれど話はそれきりで、彼らの子どもの話や仕事の話、今年のプロ野球の話などで二時間が過ぎた。僕らの距離感は三年前となにも変わっていなかった。とてもありがたかった。

夏祭りで引いたおみくじには、「おいおいしあわせきたるべし」と書かれていた。