きょうのナナバン

140字以上のあれやこれ。

はじめてのベーカリーはパンのフレーバーがした

以前から気になっていたベーカリーの前を通った。ウォーキングの途中ではあったけれど、少しだけ覗いてみようと思った。

夕方の遅い時間だったから、ラインナップはそれほど期待していなかった。けれども空っぽの陳列棚が見当たらないほどにたくさんの種類のパンが並んでいた。店内は焼けた小麦のいい香りが漂っていた。

僕はハード系のパンが好きだ。見るといくつか種類があり、店内を三往復くらいして一つひとつの商品ポップに書かれた説明を読んだ。

けっこうテレビでも紹介されている有名なベーカリーだったことは、帰ってから知った。「ここのパンがいちばんおいしい」と書いている人もいた。そういえば僕のほかに五人くらいの客がいて、会計を終えた頃には新たに二人くらいが入ってきていた。窓の外から、年配の婦人二人が興味深げに覗いていた。彼女たちはパンを鑑賞して立ち去った。

僕の手には820円分のパンがあった。ウォーキングの途中で買う量じゃない気がしなくもなかったが、我々は焼きたてパンの前に無力だ。きっと窓の外にいた婦人たちはわかっていたのだろう。入れば買わずにいられないことを。しかし僕はこうも思う。ベーカリーに入らずんばパンを得ず。

パンの味はふつうだった。